成果に連動した賃金システムの前提は、業績評価と人事評価です。

会社や部門の業績を明確にし、さらに個人の業績や成果を把握せずに、給与制度を成果主義に移行するのは上策ではありません。

eビジネスの進展により、電気や自動車の発明によってもたらされた変化を凌ぐ経済・市場の変化が進展しています。特に、仕事の変化により、求められる知識や能力も変わっています。会社の業績評価基準も、社員一人ひとりの行動基準もそれに対応しなくてはなりません。人や業績も「経験」や「根性」、「頑張れ」で伸びた時代から、サイエンスで仮説、検証する時代になりました。

 

 

認知とフィードバックに関するFAQ

 

 

人と業績を伸ばすための人事評価制度の課題をまとめてみましょう。

1) 業績数字だけでは評価できない
2) 頑張り度合いだけでも評価できない
3) 評価項目と基準が抽象的である
4) 評価が主観的で管理者間にバラツキがある
5) 目標の達成度だけでは評価が偏る
6) 効果的な育成目標がわからない
7) 本人に評価結果がオープンになっていない
これらの問題を解決しなければ、評価に対する社員の納得性は高まりません。

 

 

従来の目標管理による人事評価制度の課題を踏まえて、それらの課題を解決するために工夫したのが「改善目標によるマネジメント(MBKO)」です。

その特徴は次の2点です。
1) 目標達成の決め手となる優先課題を明確にし、その課題解決を達成基準に組み込む。 これにより、シックス・シグマとの整合性が図れる。
2) 能力・行動評価では、行動指針別に優秀な行動事例の報告を条件とする。
優秀と認められた行動は、行動指針別にナレッジ・データベースに蓄積する。

 

 

MBKOでの目標設定の考え方:
「今期のゴルフの平均ラウンド・スコアを2つ下げる」ことを目標とするケースでMBKOでの目標設定の考え方を説明します。

従来の目標設定の考え方では、次のような数値基準になるでしょう。
S:平均スコアが3つ以上下がる、
A:平均スコアが2つ下がる、
B:平均スコアが1つ下がる、
C:平均スコアが現状維持、
D:平均スコアが1つ以上悪くなった

一方、MBKOでは、SとAの達成基準には、これまでと同様に目標数値が入りますが、BとCには目標達成の決め手となる優先課題(CSF)を組み込みます。
S: 平均スコアが3つ以上下がる
A: 平均スコアが2つ下がる
CSF1: 平均パット数が1.5 以上減る
CSF2: フェアウェー・キープ率を60%以上にする
D: 効果的な取り組みができなかった。

優先課題を特定するには、まず、どんな要因がスコアに影響を与えるのかを整理し、リストアップします。このサンプル例では、ドライバーショットの飛距離、フェアウェー・キープ率、パー・オン率あるいはボギー・オン率、バンカー・セーブ率、平均パット数、平均OB数などが考えられます。 次に、それぞれの項目で、自分よりもレベルが上のプレーヤーたちと比較して、自分の改善の余地が最も大きいものを特定するのです。

なお、Bの評価は、CSF1とCSF2が2つともクリアされた場合、Cの評価は、どちらか一つの課題がクリアされた場合となります。

 

 

優先課題として、フェアウェー・キープ率を高めること、平均パット数を下げることが適切なのか、それとも他の課題が適当なのかは人により異なります。仮に目標自体が同じでも、優先課題は必ずしも同じとは限りません。

的確な分析なしでは、思い込みでの練習や、総花的な練習になってしまい、効果的な練習、お金の使い方になりません。

このような達成基準が有効な理由は、次の3点でしょう。
第1に、次のような行動が促進・強化されることです。
1)ラウンド中に無闇にドライバーの飛距離を伸ばすことは自粛される
2)パットの練習が重視される


今期、フェアウェー・キープ率が高まり、パットが上達すれば、来期以降、その時点での優先課題に取り組むことができ、毎期、着実に実力を高めることが可能となります。
第2、たまたまラウンドした時が悪天候だった、コースコンディションが悪かったといった外的要因に左右されずに、自分の取り組み成果を判断できること。
第3、取り組みの効果が現われるまでにタイム・ラグがあるので、今期の目標数値をどこまで変えられるかは必ずしも予測できないが、課題に関してはより早期に結果が現われること。