コーチング研修
〜優れた行動を学び、伸ばす〜

研修を受ける意義:

<よりよい行動を理解する>

みなさんは、記述形式の筆記テストを受けた翌朝、散歩をしているときなどに「昨日のテストでは、こう答えておけばよかった」と思った経験はありませんか。試験時間中にはよい答えが浮かんでこなかったにもかかわらず、睡眠したことで考えが整理されて、よいアイデアが得られたことになります。また、試験中にはできませんが、専門家に意見を聞くことができれば、さらによい解答が出せるのは間違いありません。

レポートの作成に際しては、一晩考えを熟成させたり、知人にアドバイスを求めることが可能です。これら2つの行動をとることで、よいレポートが作成できます。逆に、これらの行動をとらないので、レポートが平凡で、意見も注目に値しないで終わってしまうケースが見られます。一晩で、能力が変わる訳ではありません。心構えと行動の違いです。

実際の生活や仕事の局面でも、即断即決をしなくてもよい事柄に対しては、考えを熟成させ、広く意見を求めれば、よりよい意思決定ができます。会議を考えてみましょう。会議前日に、議題とともに関係書類を配布し、それらに目を通してもらい、関係者から情報を収集、意見をまとめておいてもらえば、会議では、より深い議論ができ、論点を掘り下げて検討できます。当日になって資料を配布し、内容をその場で解説し、それに対して参加者の意見を求めるより、効果的なのは言うまでもありません。参加者の能力が同じでも、会議の進め方の違いで大きな差が生まれます。

<上達による有能感を得る>

教える場合、相手ができるだけ時間やコストをかけないで学習できるようにと考えて、要領よく説明し、事例を紹介、一度、演習してもらって、「その調子です。あとは、現場で頑張ってください」で終わっては、その後、現場で期待通りに実践してもらえることは多くありません。ピアノで新しい曲を弾けるようになるには、何十回もの練習が必要です。1回の練習で満足いくレベルで演奏できるはずはありません。繰り返しの練習によって上達するまで、諦めず、忍耐を持って教えることが肝要です。

本人が上達によって有能感を得ることができれば、上達が楽しみになり、本人がもっと上のレベルを目指して自発的に努力するようになります。これは、指導・コーチングで求められる心構えと行動です。私はビジネス・スクールで教えていて「大学院の学生で、何で、こんなことができないんだ」と思うこともありますが、そのときは、本人が上達するまで、根気よく、繰り返し指導するのが自分の役割だと自答しています。

<実践によって暗黙知も獲得する>

繰り返しの訓練によって、脳神経が発達し、意識しなくても思い通りの行動ができるようになります。その状態が、学んだことを習得したことです。論語の「学びて時に之を習ふ、亦説ばしからずや」(学んだことを必要なときに繰り返し習っていると、いつの間にか理解が深まって自分のものとなり、自由に働きを表すようになる。これはなんと嬉しいことだ。)の通りです。

現場での繰り返しの実践には、もう一つ重要なメリットがあります。それは暗黙知の獲得です。いろいろな要因が複雑に絡まった状況で、何を、どうすればよいのかを考え、実践し、フィードバックを受けることで、明示化されていない暗黙知を獲得できます。

<努力によって能力を高める心構えを持つ>

「うさぎとカメ」の寓話は、単なる能力でなく、地道な努力の大切さを謳ったものです。が、自分を磨く努力を積み重ねることで、能力自体が高まります。小泉信三著『練習は不可能を可能にする』の通り、練習によって能力が伸びます。最初できなくても、努力して練習すれば、できるようになるのです。「私は金槌で泳げない」と自分の能力を決めつけないで、正しい練習を積めば、泳げるようになります。王貞治さんのホームラン記録も、畳が擦り切れるまで、毎晩練習したことで生まれました。練習なくしては、1本足打法さえ完成しなかったでしょう。

バタフライの泳ぎ方を本やビデオで学んだら、自分で水に入って練習する必要があります。やってみて、コーチにどこが悪いか確認してもらい、それを克服することが必要です。そうすることで自分の能力が高まり、泳げるようになります。この心構えを持てば、目標が達成できなかった場合でも、「チャレンジングな目標に挑戦したことで、自分を伸ばすことができた。次は、もっと努力しよう」という気持ちになります。こうした心構えの人は、自分を高めるチャレンジングな目標を設定し、努力しますので、自分を伸ばせます。

他方、上手くできないと、自分の能力が劣っていることを示すことになると考える人は、できそうにないことは自分でやってみません。恥をかくのは嫌だと思って、やってみないと、いつまで経ってもできるようになりません。自分を伸ばせません。こうした姿勢の人は、チャレンジングな目標を避けます。自分を伸ばすことよりも、自尊心を保つことが優先されます。現状のレベルが高くても、そのレベルに止まってしまいます。

本研修では、自分を磨き、伸ばすのに役立つ心構えや行動を理論的な背景も踏まえて学び、それを現場で試行し、的確な行動が発揮されたかどうかを省察することで、理解を深めるとともに習得を図ります。

形式:
Webやメーリング・リストを活用し、テーマについて学び、参加者が自らの行動を考え、実行し、レポートを提出、それに対して指導コーチからのコメントとフィードバックを受ける形の現場での実践を組み入れた教育です。テーマ毎に2回のレポートがあります。

オプションで、現場での実際の面談を観察し、個別指導することもできます。

特徴:
マネジメントは、ゴルフのスイングと同じで、内容を頭で理解するだけでなく、上手く実践できるようにすることが大切です。例えば、第4回の動機づけ・管理スタイルについては、理論を説明した資料の内容を理解するのは難しいことではありませんが、実際に的確に動機づけできるようになるには、実践が必要になります。管理スタイルを習得するには、繰り返しの訓練が不可欠です。

しかし、これまでのリーダー研修や管理職研修では、理論等を頭に入れるのが中心で、実際の発揮は参加者に委ねられていました。研修に参加し、現場で活用しようと思う人もいない訳ではありませんが、実際に行動し、実践してみる人は僅かです。また、実践が前提になっていないので、学習意欲も十分に高まらないケースが少なくありません。

本教育では、テーマに関する基礎知識はメールやWeb、本で理解してもらい、自分の仕事で実践し、その結果についてフィードバックを受けます。実践後、理解不足の点があれば、また参考文献等に戻って基礎を勉強できます。教育用語では、機能学習あるいはアクション・ラーニングと呼ばれる手法です。

また、コンピテンシー(行動特性)の観点から、現場で発揮された行動を分析し、フィードバックします。それを基に、行動のレベルアップのための改善プランを作成してもらいます。

費用:
基本料金は、一人16万円です。(管理スタイルと職場風土を調べる360度診断を含む。)

1グループの参加人数は5〜12名程度。

テーマ(実施時期は調整可能です。):

第1回 「学習スキルを高める」
2013年9、10月

学習ポイント:
料理学校に行ってレッスンを受けた場合、その後1週間以内にその料理を作ってみるものです。自分でやってみないと何がわからないのかわかりません。身に付きません。一回だけ料理しても、腕は上がりません。でも、実践し、フィードバックを受け、訓練すれば、上達します。ビジネスやマネジメント・スキルも同様です。

自分の失敗や成功から学ぶときにも、この学習のサイクルを回すことが欠かせません。

失敗に学ぶポイントは次の3点です。
1)失敗につながった自分の行動を認識する。
2)その経験から行動指針を学ぶ。
3)次の局面の行動での改善イメージを描き、実行する。

第2回 「成長マインドを持つ」
2013年11月

学習ポイント:
リーダーやエグゼクティブは、仕事を通して育つものであり、教育によって育成できるものではないとの思い込みを持っている方が少なくありません。能力を伸ばす観点からは、まず、努力すれば知力・能力は伸びると考えることが不可欠です。知能検査でのIQが子どもの知能レベルを表していて、IQで成績の良し悪しが決まると思っている教師の下では、成績の向上があまり見られない一方、教師が、子どもの可能性は無限だと信じて、相手に合った教育環境を与えると成績が大きく向上するという報告があります。自分の行動を変革するためにも、成長志向マインドを持つことが重要です。

第3回 「動機付けと管理スタイル」
2013年12、2014年1月

学習ポイント:
XY理論にはじまり、達成目標理論まで、動機づけや管理(リーダーシップ)スタイルについては、多くの書籍があり、私たちは頭ではそれなりに理解しています。しかし、効果的な管理スタイルをタイミングよく発揮しているか、状況に応じて、組み合わせたり、使い分けているかとなると甚だ疑問です。実際に、どんな時に、どうすることが相手の内発的動機づけを高めることになるのかを事前に考え、普段は発揮していない管理スタイルを活用してみることが管理スキルの向上につながります。

第4回 「目標を設定する」
2014年2、3月

学習ポイント: 成果分野別にチャレンジングで具体的な目標を立てる意義がわかっていても、自らの目標をしっかりと設定していますか。ビジネスでは「人材を育成する」、プライベートでは「健康増進」などは、「方針」であって「目標」ではありません。また、目標を設定する際に、目標達成のための優先課題を的確に捉え、行動プランを策定しなければ、目標設定の意味が半減してしまします。結果=評価の外発的動機付けでなく、「有能感」を重視した内発的動機付けの理論に添って、2012年度に取り組むべき優先目標を設定してみます。

第5回 「優れた行動を認知・イメージする」
2014年4、5月

学習ポイント: 「結果がよかったのだから、何か、優れた行動があったはずだ。」と考えるのは間違いです。 なぜよくないかと言うと、優れた行動が特定されません。そうなると次の問題が生じます。
1)具体的な行動を認知・評価できない。ゆえに、有能感と関係性を高めるフィードバックができない。的確な能力・行動評価、人材アセスメントができない。結果的に、適材適所の人材活用や効果的な教育研修が図れない。
2)事前に、どんな行動を取ることが望ましいのかわからない。単に、「一生懸命に頑張る」といった抽象的なレベルでの話しで終わってしまい、具体的な行動のイメージが描けない。上司にすれば、的確なコーチングができない。ゆえに、部下の行動レベルが高まらない。